エクスタシーの追求──
昭和女が【私】を超えた瞬間
昭和という“クセ強め”の時代を
くぐり抜けてきた
私たちアラフィフ世代
あの頃の空気を吸いながら
日常のど真ん中で突然訪れる
“意識がひっくり返るような瞬間”……
幾度そんな経験をしてきたことか
それは大げさな儀式でも
スピリチュアルな修行でもない
ただの生活の中で
ふとした拍子に世界が反転し
「えっ、今の私、
ちょっと次元超えた?」
と本気で思ってしまうような
あの衝撃……
もしかしたら
同じような“超越の瞬間”を
味わってきた同志が
この広い日本のどこかに
いるのかもしれない
そして、まだ人生の“深み”を知らない
若い世代の女性たちへも伝えたい
日常の中には
あなたを変えるほどの衝撃が潜んでいる
それを拾えるかどうかは
あなたの感性次第
✦ 昭和女、40歳手前 ―――
あの出産劇は
人生でいちばん
“次元が変わった瞬間”だった
予定日を一週間も過ぎても
私の長女はまったく出てくる気配なし
病院のベッドで管理入院になった私は
毎日「今日こそ来る?」
と自分の身体とにらめっこ
陣痛促進剤を打っても
また打っても ……沈黙
まるでお腹の中で
座り込みでもしているかのように
微動だにしない
医師からは淡々と告げられる
「そろそろ帝王切開の
サインをお願いします」
ええ、もちろん理解してる
リスクも、年齢も、状況も……
でもね
あの時の私は
昭和女の意地がフル稼働していた
“まだいける、まだ私は折れない”
サインを前に
私は深呼吸して首を横に振った
あの瞬間の空気の重さ
今でも忘れない……
そして
ついに陣痛が“本気”を出してきた
誘発剤の効果が遅れてやってきたのか
突然
身体の奥底から
波のように押し寄せる痛み
「これが…本物か」
そう悟った瞬間、世界が一気に狭くなる
時計も、周りの声も、病室の光も
全部どうでもよくなる
ただひたすら
“この痛みを越えた先に、
私の人生が変わる瞬間がある”
それだけを信じて
呼吸を刻む
痛みは容赦なく、遠慮なく
私の全身を揺さぶる
でもね、不思議
途中から痛みが痛みじゃなくなるのよ
身体が勝手にスイッチを入れて
“産むモード”に切り替わる
あれはもう、理屈じゃない
動物としての本能が
私を完全に乗っ取った瞬間
✦ そして——世界が一瞬、静止した
最後の力を振り絞った瞬間
時間が止まったような感覚に包まれた
痛みがスッと消え
視界が一気にクリアになり
身体の奥から何かが抜けていく
その直後に聞こえた
——あの小さな産声
あれはもう
“感動”なんて言葉じゃ足りない
魂が震える
世界が反転する
自分が自分を超える瞬間って
こういうことなんだと知った
40歳手前、リスクだらけの自然分娩
あの出産劇は
私の人生で最も“超越”した瞬間だった